ミュージシャンや芸能人に多数のファンを持つファッションブランド「シェラック」のプレス 藤原慎太郎。一見華やかに見える仕事だが、その裏側は個性や誠実さなど人間力が試される世界。プレスという職業を通して、商品の価値を高める事、ブランドのイメージを守る事、人とのコミュニケーションを大切にする事の重要性を垣間みる。
F+:仕事終わりでお疲れのところお越し頂きありがとうございます!よろしくお願いします。
藤原慎太郎(以下 藤) :いえいえよろしくお願いします。
F+:今日はプレスという仕事を詳しく聞いていきたいと思いますが、まずは仕事内容を教えてください。
藤:今はスタイリストのリース対応(雑誌やTV等である特定のブランドの洋服を使用する場合は、そのブランドからレンタルするのが一般的。)であったり、雑誌の編集と打ち合わせをしたり、基本的にその2つがメインになっています。さらにログ撮影の段取り打ち合わせ等、要はブランドのビジュアルであったり、イメージを考えていく仕事です。
F+: 自分のブランドが周りの人からどう見られているかというのを伝えるのが基本的な仕事ということですね?
藤:(名刺を取り出す)また、こういうものや、展示会のDM(ダイレクトメッセージ)なども考えています。
F+ : 今言って頂いた業務の中で、一番大きいものはなんですか?
藤:スタイリストとの打ち合わせや対応は、一日のなかで一番時間を使いますね。
F+: 例えば、ウチのブランドはこういうイメージじゃない、のような修正はあるんですか?
藤:それはありますね。使い方もそうだし、この人に着てもらいたい、着てもらいたくないという事もあります。お金を出している分、タイアップ(雑誌などと提携し、費用の一部を負担する変わりに特集を組んでもらうなど、特定のブランドを目立たせる広告の一種。)の場合は特に強気でいきます。ただ、スタイリストとの関係もあるので、そこは臨機応変に。このスタイリストは信頼しているので、全部お任せしま、という事もありますね。
F+: 平均的な1日の業務内容を教えてください。
藤:まずはメールチェックですね。雑誌編集の方から貸し出した服の記事が送られてくるので、それをチェックしていると午前中が終わってしまいます。そしてその合間にスタイリストのリース対応が入ってくるんですけど、1日平均7〜8件くらいです。
F+: その後は昼食を挟んでまた打合せですか?
藤:そうですね。小さい会社なのでみんなで話し合います。会議という感じではなく、企画がこういう路線でいきたいという話しに次は営業の目線で、プレスの目線で話し合います。みんなで集まって「どう?どう?」っていう感じが多いですね。システマチックではないので、もし忙しくなければリサーチに行ったり、展示会に行ったり、割と自由にやってます。
F+: 先ほどの原稿チェックなども、藤原さんの判断で決められるんですか?
藤:基本的にはそうなんですが、重要な事は最終的に社長がジャッジします。
F+: では会社が終わったら、仕事でお付き合いがある人と飲みに行ったりするんですか?
藤:割と多いんですが...最近気づいた事があって。20代前半からプレスという仕事に就いて、飲み二ケーションのような事が大切だと教えられてきたんですが、別に無理をしていく必要もないんだなと思うようになりました。
F+: なぜそう思うようになったんですか?
藤:飲みに行くと打ち解けやすくはなるんですが、結局打ち解けられる人は限られてくるんですよね。なので仕事をするうえで無理する事よりも、目標を持って頑張っていく方が人は成長すると思うんです。とは言ってもよく飲みに行くし、帰れない事もありますけどね。笑
F+: 自分らしさが大切なんですね。
藤:前の会社でプレスをしていた女性の方がいたんですけど、その人が辞める時に、「プレスは夜の付き合いとか、パーティーやイベントに行く事が大事だと思っていたら大間違いで、あんたは目立つんだから、やたらめったら色々な所に顔を出してブランドを安売りするのが一番良くない。」と言ってくれました。誰かの真似ではなく自分のやり方、キャラクターをもっと知ってもらう事が大事なんだと思います。
F+: そもそもファッションの道に進もうと思ったきっかけはなんですか?
藤:元々高校時代は古着が好きだし、音楽とかのカルチャーも好きで、なんとなくですが服の仕事したいなと思っていました。あとは母親の親族に服飾関係の仕事をしている人が多かったのもありますね。
F+: ドレメに入学してからはどうでしたか?
藤:ドレメで勉強した事は何となく覚えている程度なんですけど、やっぱりそこで知り合った友達と出会えたのが良かったなって思います。素敵な人たちと巡り会えたのが大きいですね。
F+: ドレメで教わっていた先生を教えてください。
藤:ファッションビジネス科(現ファッションサービス科)1年生の時は山下先生で、2年生のファッションアドバイザーコースでは徳江先生でした。
F+: ドレメを卒業後は何をしていましたか?
藤:卒業した時点では決まっていなかったんですが、販売の仕事を始めました。それが1年程で倒産しちゃって。
F+: 倒産!?
藤:その後は服の企画をやってみたくて、なぜかミセス向けのニットメーカーに入社しました。半年間やっていたんですけど、やっぱりこれは違うな、と思って辞めました。(笑) そしてどうしようかなと思っていた時に、たまたまセレクトショップで「WJK」(ファッションブランド)の服を見て、かっこいいなと思ったので、すぐに電話して「なんでもやるから入れてください」とお願いしました。
F+: 求人を見た訳じゃなく?
藤:そうです。普通に電話をして、「社長お願いします。」って言いましたね。そうしたらたまたまWJKも会社を立ち上げたばかりで人手が全然足りない状況だったようで、入社する事ができました。
F+: すごい行動力ですね。
藤:運が良かった。WJKも小さい会社だったので本当になんでもやりました。生産の手伝いから営業もやって、販売もやって、プレスもやって。
F+: では藤原さんにとってプレスや営業の線引きはあまり感じませんか?
藤:あまり感じません。誰かが作った物を良く見せるというのが僕には向いているのかなって思いますね。
F+: 前の会社を辞めるきっかけは何だったんですか?
藤:シェラックの社長と元々知り合いで、誘ってくれたのがきっかけです。色々と相談に乗ってもらったり、助けてもらったので、やっとその恩返しができていますね。社長もすごい素敵な人なので。
F+: その流れの中でファッションじゃない道を考えた事は無かったのですか?
藤:ん〜...そもそも考えた事が無いかもしれません。
F+: 例えば音楽が好きなら、そういう道もあったと思うんですが。
藤:そうですね...やっぱりファッションが好きだという事に尽きると思います。
F+: 本当に今の仕事が充実していてるという事ですね!
藤:充実しています。日々勉強です。
F+:少しシェラックについて教えてください。例えばプレスという立場で、シェラックの良さをどのように伝えますか?
藤:シェラックは社長(デザイナー)が素敵な人で、それがそのまま服に現れているブランドだと思いますね。豪快なんだけど繊細な部分もあって、武骨なんだけどセクシー。まさに「丸谷」(デザイナー)という人間に魅力があるブランドです。とは言ってもまだまだ認知されていない部分があるので、自分が力になれればなと思っています。
F+: デザイナーの魅力が詰まったブランドという事ですね。
藤:ただ、12年ブランド続けていて次のステップに進まないといけない時期に差し掛かっていると考えているんですが、今度デザイナーが自分で着たいと思うようなプライベートラインも始まる予定です。
F+: 具体的にはどのようなものになるんですか?
藤:ブランドの核になるものを高めていって、かっこいい大人の人にアプローチしていきたいですね。会社の規模が少しずつ大きくなってきているんですが、変に消費者を意識した服になっていて、ブランドのこだわりやイメージを再構築というか...このくらいの規模のブランドならもっとトンガっていてもいいと思うんですよ。もっと男の人が憧れるようなイメージをつけたいです。
F+: 将来の目標があれば教えてください。
藤:自分の人生を考えた時に35歳までには独立というか自分の力で仕事をしていきたいと考えているんです。なのでシェラックに入社した時も、5年間は勉強させてください、と言っていました。
F+: 将来こうなりたいという目標になる人はいますか?
藤:沢山の人と出会うのでみなさんから影響や刺激は受けますね。その中で独立している人もいるのでお手本になっています。
F+: ファッション以外に興味のある仕事はありますか?
藤:音楽もそうだしインテリアも好きなので、プレスという職業を活かして色々なものを紹介していきたいですね。あとはディレクターやプロデューサーのような職業も興味はあります。一から何かを生み出すよりも、既にあるものをプロデュースしていく仕事はおいおいやってみたいなと思ってます。
F+: 最後に今プレスになりたいという学生がいたらどんなアドバイスをしますか?
藤:ん〜...何でもやってみるべきじゃないですかね。 人との繋がりとか付き合いは絶対損はしない。それに尽きますね。服の仕様だったり、ウンチクは仕事始めてからも勉強できるんで。まずは自分のキャラクターを売り込む。僕も仕事始めてわかったんですけど、プレスって教えられるものじゃなくて、自分のやり方を探していくものなんだと思います。先輩の真似ばかりしていてもそのうち違和感が出てくるはずなので、自分らしく仕事した方が人はついてくると思います。
F+: 学生でもプレスに憧れを持っている人は少なくないと思いますが、肩書きにこだわる傾向はどう思いますか?
藤:そもそも続かないんじゃないかなぁ。プレスって正解がないんですよ。自分で考えて行動する事が大事で、肩書きよりもそこに面白さがあるんじゃないかと思います。それとブランドにとって一番愛情を持っていなければならない立場だと思います。本当に好きな気持ちがあれば上手に話せなくても伝わるはずです。
F+: 今後が楽しみですね!今日はありがとうございました!
藤:ありがとうございました。
1:何をきっかけに今の仕事を志しましたか?
A:母親がおしゃれだったので小さい頃からファッションが好きっていう気持ちはずっとあって、
大人になってもずっと好きで気が付いたら今、こんな感じです。
2:今の仕事の辛い事、楽しい事。
A:辛い事 → 朝まで呑んだ次の日の仕事。
楽しい事、自分のした仕事が目に見えて評価された時。嫌な言い方かもしれませんが、ファッションを仕事にしている以上、お金になって返ってくる瞬間が一番楽しいのかなと。
3:今の仕事の他に関心のある事、またはアイデアの源。
A:本屋が好きです。本が好きっていうか本屋が好きです。本屋さんもやってみたいです。
4:仕事に対しての信念、決まり事。
A: A.約束は守る。時間は守る。
5:ドレメに通っていて良かった事、役立った事。
A:最初はドレメじゃなくて文化に行きたかったんです。(笑)文化ってなんか格好良かったっていうか…..。有名だし、『文化服装学院に通ってます。』ってなんかイケてるな~っていうか….. 。
そもそもドレメってどこ?目黒なら渋谷、原宿、近いしいっか~。みたいな(笑)まぁ、色々な理由があってドレメに入ったわけなんですが、良かったことは素晴らしい仲間に出会えたこと。それに尽きます。ドレメの卒業生はみんなそう言いますよね?(笑)特にビジネス科(笑) おまえもその回答かって感じですけど、だけど本当に友達、先輩、後輩。先生も親身になって色々相談に乗ってくれる人ばっかりだったし、そんな素敵な出会いがあったから今の自分があるって思います。
最後にファッションを学んでいる学生や、今から学ぼうとしている人々に向けて一言。
A:ファッションってそもそも、ドキドキやワクワクがたくさん詰まった楽しいものだから、まず自分が楽しまないと人にファッションの素晴らしさは伝えられないと思います。それを仕事にしたいと思っているならなおさらだと思います。 なので先生の言うことはそこそこ聞きつつ、(笑)やりたいことをおもいっきりやってください!授業中だけでなくドレメでの数年間という時間の全てが勉強です。社会にでたときにその全てが自分の実になり、軸になり、糧になってくれます。要は楽しんだ者勝ちです!!
FASHION PLUSとは、ドレメが培ってきた伝統に新しい価値観を加え、そこで生まれたクリエイティブのヒントを共有するプロジェクト。
現在ファッションの世界では職種の細分化が進んでいますが、その反面求められている資質は年々多様になっています。しかしファッション教育の現場では、従来の方法で全てに対応する事は難しいというのが現状です。
そのような中、今まで築き上げてきた伝統に新しい価値観を加えて、ファッションやものづくりを見つめ直す時期にきているかもしれません。
FASHION PLUSではWEBメディアを使って、ファッションだけではなく、卒業生や他分野のクリエーターのインタビューなどを掲載。「ものづくりに関わること」の楽しさを伝え、そしてファッションに関わる様々な情報を在校生やこれからファッションを学びたいという人々に対して発信していく事が目的です。
杉野学園ドレスメーカー学院のオフィシャルサイトはこちら:http://www.dressmaker-gakuin.ac.jp/