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自身の旅行記「おかっぱちゃん旅に出る」がNHKでアニメ化され今注目を浴びる
イラストレーター Boojil (ブージル)。 イラストの枠にはまらず多方面で活躍する
彼女は、クリエーターにとって作品という呪縛を軽やかに飛び越える脚と独自の視点で世界を切り取る眼を持っていた。 誰からも愛されるキャラクターで、世界を旅する「おかっぱちゃん」のメキシコ留学直前インタビュー。

F+:今日は遅い時間にわざわざありがとうございます。では色々と聞いていきますのでよろしくお願いします!

Boojil (以下B)いえいえー。こちらこそよろしくお願いしますー。

F+:まずはNHKでの「おかっぱちゃん旅に出る」(小学館文庫)のアニメ化(視聴者投票でレギュラー番組を決める NHK・Eテレ『青山ワンセグ開発』でこの夏、見事優勝したBoojil原作のアニメ番組が現在絶賛放送中)おめでとうございます!!

B:あぁーありがとうございますー。皆さんのおかげですよ。あれはもうね駄目かと思ってましたよ。

F+:たしか投票結果も結構僅差でしたよね。

B:そう僅差でした。あんなに頑張ったの久々でしたね。放送当日原宿に行って、自分で看板持って今日放送あるんで投票お願いします!!って選挙活動みたいに宣伝しました。笑

F+:番組の企画でやったんですか?

B:違います。自主的に、私と監督(田中のぞみ)とプロデューサー(中川憲)3人で。「やりましょう!」って私が言い出したんですけど。ビラ配ったんですよ。これで駄目だったらしょうがないって言っていたんですけど、結果がついてきて本当良かったー。

F+:周りの反応はどうでしたか?

B:びっくりですよ。もう家族は大変。笑 もうその前に企画が通る事も驚いたし、あそこに出るまでにかなりの段階を経てるんです。最初全部で120社くらいのエントリーがあって、4月からトーナメントをしていってようやく最後の投票なので。結構な苦労が必要なんですよねぇ。やってみてわかりましたけど。

F+:120社から勝ち残ったんですね!他にもタレントや芸人の方々が出演していた作品もありましたよね?

B:私達は本当に知名度0のようなものだったから、友達と家族とお客さんのおかげです。正直言うと、他の制作会社が作った番組が芸能人に神頼みっていうのがあって、内容も出演者に頼っていたものが多かった。それが助かりました。あとやっぱり認知度の高い芸能人が出演しているので、プロデューサーや監督が色んな人にお願いするという事を恐らくあまりやってこなかったんだと思います。だから少しずつ努力すれば結果は付いてくるのかなって。

F+:本当に快挙ですよね! 例えばアニメ化が決まってから大きな動きはありましたか?

B:仕事の面だと問い合わせが増えましたね。あとは仕事へのリクエストが通りやすくなったかな。以前はクライアント側からの意向に沿って制作していくことが多かったんですけど、今は自分のやりたい事聞いてもらいやすくなった。笑 もちろん全てやりたいようになるわけじゃないですけど。あとは年齢の差もあります。やっぱり20代でこういう仕事やってるとまだまだ若いんですよね。クライアントでも仕事を一緒に進めていく管理職の方とかもちろん年上の方なので、まだわたしは小娘なんですよ。私がこのまま一生懸命頑張って35歳くらいになったら仕事しやすくなったらいいなと思います。

F+:基本的な質問ですが、何がきっかけでイラストレーターを目指したんですか?

B:著書「おかっぱちゃん旅に出る」でも書いていますが、私スタイリストになりたかったんですよ。 そして学生の時にあるブランドのファッションショーを観に行ったんです。そしてバックステージを 見学させてもらえる機会があって、スタイリストさんやディレクターさんに声かけたら、冷たく あしらわれちゃって、、、もちろんそんな人達だけじゃないし、仕事中に声を掛けた私も悪かったんですけどね。

F+:それはショックでしたね。

B:ショックでした。私が尊敬している人や、周りで活躍している人はみんな物腰柔らかくって丁寧に話してくれる人が多いんです。やっぱり仕事をするうえで、謙虚な気持ちは持ち続けなきゃなと今でも思っています。そんな事があって、元々好きなイラストに専念するようになりました。

F+:そして美大などで専門的なテクニックや知識を学んでいないのに、イラストレーターとして活躍されているのにも驚きです。

B:ありがとうございますー。でも活躍してるかなぁ?

F+:十分活躍していますよ!!なので専門的な勉強をしている方々のように変に作品に没頭しているというより、作品といい距離感で向き合っているのかなという印象を持ったのですがどうですか?

B:そうですね。絵は好きだし仕事として満足はしてるんだけど、でも新たに色々な人と仕事をする為には絵というものが自分の得意分野になっているってだけで、絶対絵じゃないといけないって実は思っていません。ただ中心としているイラストレーターの仕事はブレずにずっと続けていきたいですね。その上で頼まれた仕事に対してはありがたいと思っているし、どんどんやっていきたいと思っています。

F+:今月メキシコへ留学するとのことですが、きっかけを教えてください。(※現在は留学中)

B:五年前に一度メキシコに一人で旅行した事があって、その時に見た町並みが原色だらけで、日本には無い色彩感覚があったんですよ。お年を召した方も花柄のエプロン着てたりして、派手でとにかくすごいんですよ。笑 あとメキシコに行ってからすごく刺激を受けて自分の作風が変わったんですよ。前までは周りを気にしていた部分があって、「この色の隣にこの色を置いたら派手すぎるんじゃないか?」とか。誰に言われた訳でもないのに、縛られていた感覚がありました。でもメキシコに行ったら色使いが全部自由で、歩いててスゴい感動したんですよ。アドレナリンが出過ぎて、ナチュラルハイを通り越しておかしくなっちゃいました。笑 特に「オアハカ」という街がとても印象的で、行ってみて一番好きな街だったんですよ。人は親切で、ご飯もおいしいし、環境も素晴らしい。それと好きな画家で「フリーダ・カーロ」というメキシコの女性がいるんですが、彼女の生き方も好きですね。そしてずーっと留学したいという気持ちはあったんですが、お金が貯まらず5年もどかしい時間を過ごしたんですよ。そしてようやく行けるぞと。笑

F+:しかしクライアントが増え、作品も多くの人達に認知され始めている状況で日本を離れる事に相当の覚悟があったのではないでしょうか?

B:実は来年で活動10年なんですよ。

F+:それは”Boojil”と名乗り始めてですか?

B:そうです。絵の仕事を始めて10年。展覧会や仕事を重ねてきて作品作りに行き詰まっているんです。実は。

F+:行き詰まっている!?例えばどんな事に...

B:あのー... 作りたいものが無い。笑

F+:無い!?

B:今まで絵を描く事にもちろん興味は尽きないし、常に考えてきたんですけど、”平面”だけでは物足りなくなってきたんですよ。それでメキシコには結構面白いお面や人形の民芸品があって、それぞれが色彩豊かでスゴい好きなんです。そんな自分がやった事のない技法を、自分に合うものがあるか解りませんが、まずは何も無い所から色々学んでみたくて。日本だと周りの人たちに...なんていうんですか?例えばBoojilは楽しくって、気分が良くなる絵を描いているとか、カラフルでハッピーな絵を描いているとか思われがちなんですけど、実際そうじゃない所もある。でもそれって日本で作品を作っていると、ちょっとお客さんの目が気になるんですよ。だから私の事を誰も知らない場所で、やっぱり絵が好きだから10代の時みたいに自分の描いた似顔絵がきっかけで誰かと繋がっていったり、仕事ではない「お絵描き」っていう事をもう一度楽しみたいんです。自分磨きをしたいんですよ。

F+:なるほど。初心にかえるという事ですね。日本での仕事はできる範囲で継続していくつもりですか?

B:そうですね。一応仕事ができる環境は整えていくんですけど、ただやる仕事は選んでいます。ある程度メキシコにいる時間を大切にしたいから忙しくはしたくないんですよね。でも実はメキシコに到着してすぐに一件仕事の予定があるんですよね。

F+:どのような仕事ですか?

B:最近決まったんですが、日本食レストランの壁画をやらせてもらえる事になって、それがメキシコシティで一週間の予定なんですけど、その後留学をする予定ですね。あと「箱庭」(http://www.haconiwa-mag.com)という日本のWEBマガジンで連載をさせてもらう事になっています。そこで同世代の人たちに、留学したくてもなかなかできない人って沢山いると思うんですよね。私も5年掛かったし。そんな人たちの為に、自分の実体験をリアルタイムでWEB上に連載して、見本というか刺激を受けてもらえればと思っています。イラスト、エッセイ、写真とかを週一回更新する予定ですね。メキシコの魅力を日本の人たちに伝えられたらいいなぁ。

F+:今回インタビューするにあたりBoojilさんの事を調べさせていただいて感じたのが、大多数のクリーター、アーティストにとって作品がメッセージや主張であると思うのですが、Boojilさんの場合自分自身が作品の一部であり、「Boojil」というブランドをプロデュースしているのではないかと思ったんですが、そういう感覚はありますか?

B:自分をさらけ出し過ぎなんですよ。私。 笑

F+:良い意味で割り切っているというか、作品に対して過度のこだわりを持っていないのが新しいのかなと思いました。

B:そうですね。自分のこだわりを持ってやるのも大事だけど、この時代不況だし。笑 自分から何かを作り出さないと生き残れないんじゃないかなと思います。 私別に仕事は何でもいいんですよ。絵で食べていけなかったらカレー屋をやろうと思ってるくらいカレーが大好き。カレーが好きだという理由だけなんですけど。笑 ただ絵が好きだから今まで続けられてるし、楽しみにしてくれてるお客さんがいるので、期待に応えたいという気持ちもあります。

F+:色々とBoojilさんの言葉を聞いていると「企画屋」なのかなと感じたんですが。

B:あー!そういう印象でした!?私企画するの大好きなんですよ!楽しい事を考えるのが一番良いんですよねぇ。

F+:先ほどの話に戻るのですが、そういう感覚とものづくりがいい距離で両立していると思います。

B:絵を描いていなかったら、そういうディレクションの方に専念したいぐらい。いろいろアイデアを出して。音楽とかアートとか全部一緒の場所にできるのにみんな別々だから、まあ今はだんだん変わってはきていますけど、なんかもったいないなと思っていて。だから境界線を作ってないし、誰とでもお話できるのもそういう理由かもしれませんね。笑 でも企画の仕事してるんですよって言った事がないし、名刺にも書いていないですけど、そのうちそういうことも出来たらいいですよね。

F+:今日は遅くまでありがとうございます!メキシコでも頑張ってくださいね!

B:こちらこそありがとうございましたー。はいー頑張りますー。

1:何をきっかけに今の仕事を志しましたか?

A:19歳の時にカンボジアに旅に出て、そこで出会った少年と絵を描いてコミュニケーションをとり、お絵描きが世界共通の遊びだと改めて知ったから。 世界に通用する仕事、誰とでもコミュニケーションがとれるツールだと思ったからです。

2:今の仕事の辛い事、楽しい事。

A:気分がのらないと描けなくなることがある。絵の仕事を通して世界中国籍、性別、年齢問わず仲良くなれること。

3:今の仕事の他に関心のある事、またはアイデアの源。

A:旅と、音楽、映像。全て自分で作れるようになったら面白いな~

4:仕事に対しての信念、決まり事。

A:常に先を見て目標を掲げること。決して人を見下さず、丁寧な対応をすること。

5:ドレメに通っていて良かった事、役立った事。

A:学校で学んだ縫製のテクニック、スタイル画やデッサンなど、作品を製作する上でとても役になっています。そして友達と出会えた事です。

最後にファッションを学んでいる学生や、今から学ぼうとしている人々に向けて一言。

A:わたしがドレメを卒業してから約8年が過ぎました。
学生時代からスタートしたBoojilの活動は今は生活の中心となっています。

この時代に生まれ、不況と言われている日本社会も海を越えて見返してみると、国民の生活レベルは他国よりも大変高いものです。 学生時代は無限に自由な時間があります。気づいていないかもしれないけれど、卒業と同時にわたしたちは仕事をしなくてはなりません。 学生時代にやってみたいこと、興味のあることが1つでもあれば、まずは行動に移してみましょう。一歩を踏み出して、あとで自分に合うかどうか確かめてみればいいのです。 何事も初めてスタートすることは勇気が必要。でもやってみなければ分からない。行ってみなければ感じることが出来ない。話してみなければ相手がどんな人なのか分からない。 すべてにおいて、経験は人を育てる力を兼ね備えています。30歳まで、誰にもできない経験を積むこと。恐れずに行動してみましょう。 わたしは現在28歳。あと2年は自分を育てるための時間にあてます。遊ぶのではなく、毎日が勉強。 将来を心配する気持ちは大変わかります。わたしも23歳までアルバイトをしながら絵を描いていましたから。 努力なしではなりたい自分にはなれません。なんでもいいので、目標を掲げ紙に書いてみましょう。ひとつずつ意識をして結果を出していきましょう。 できたもの、できなかったもの。努力したか、できなかったかは自分自身がよく知っているはずです。 一度踏み出した第一歩で、その行動が自分の人生を大きく左右することもあります。もし、忘れられない良い経験になったのなら 次は継続させることが大切です。続けることが人生で一番難しい。生きていると色んなことが起こります。 だけど、諦めずに続けること。わたしにとってもそれが人生で一番重要な課題です。一緒に頑張りましょうね!

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  • Boojil
  • ブージル
  • 1984年横浜生まれ。
    イラストレーター・エッセイスト・漫画家・役者・声優など
    現在ジャンル問わず、広告、アパレル、CDジャケット・PVなどのイラスト、デザインを手がける。
    *ブージルとは、"自分のブサイクな絵をいじる"からなる造語。
    Boojilのオフィシャルウェブサイト。
    http://www.boojil.com
    メキシコ留学日記はこちらから
    http://www.boojil.com/blog

FASHION PLUSとは、ドレメが培ってきた伝統に新しい価値観を加え、そこで生まれたクリエイティブのヒントを共有するプロジェクト。

現在ファッションの世界では職種の細分化が進んでいますが、その反面求められている資質は年々多様になっています。しかしファッション教育の現場では、従来の方法で全てに対応する事は難しいというのが現状です。
そのような中、今まで築き上げてきた伝統に新しい価値観を加えて、ファッションやものづくりを見つめ直す時期にきているかもしれません。 FASHION PLUSではWEBメディアを使って、ファッションだけではなく、卒業生や他分野のクリエーターのインタビューなどを掲載。「ものづくりに関わること」の楽しさを伝え、そしてファッションに関わる様々な情報を在校生やこれからファッションを学びたいという人々に対して発信していく事が目的です。

杉野学園ドレスメーカー学院のオフィシャルサイトはこちら:http://www.dressmaker-gakuin.ac.jp/